家の中、巣の中

妹へ

久しぶりです、元気ですか?

お姉ちゃんはやっと引っ越しを終えて、明日から出張です。

引っ越しがなかなか終わらず、最後は彼氏の家族も巻き添えにしてしまいました。片付けは本当に苦手だという話をお母さんとしていたので、そのことについて話をします。

海外に住んでいるのと、クリスマスなどで友達の実家に遊びに行くこともよくあり、いろんな人の家を見てきました。そこで思うのが、自分の家をどうするかは本当に人それぞれだなということです。

前に、ラジオで結婚寸前の17年一緒だったカップルが、結婚してしまう前に、数ヶ月間別々に住んで、できるだけ多くの人と一夜を共にするということをしたそうです。その時の男の人のインタビューで、「いろんな人の家を見ることができて面白かった」という感想を残していたのが印象的です。考えてみれば、なかなか他人の家の中をしかもその人が普通に日常を過ごしている状態で見ることはほとんどないと思います。「普段は散らかってるんだけど」と言いながら、部屋に通してくれる友達の普段の部屋の状態はどうなのか、お姉ちゃんはとても気になります。

親友くらい仲のよくなった友達に、ありのままの部屋を見てもらおうと思って、招待した時に特に片付けをしませんでした。そしたら「外から見たら仕事もできるし、ちゃんとしてるって思われると思うけど、そういう人たちに部屋を見せたら評価が下がるね」と言われて、ちょっとショックを受けました。

お姉ちゃんは片付けが苦手ですが、思うにそれには2つの理由があります。

一つ目は、物が多い家で育ったから、あまり片付いていると落ち着かないということ。どこに行っても、私物がそこらへんにあったりして、ちょっとした生活感がないと、落ち着きません。二つ目は、片付けをいつもやってもらっていたということ。お母さんに片付けてもらうのと、そのあとは彼氏やさらには家政婦さんと、誰かに片付けてもらうのが当たり前になっていたので、いまだにちゃんと片付けが身についていないのかもしれません。

お姉ちゃんの知り合いで、部屋がピカピカで、シーツのシワも許さないような人がいます。その人の家に遊びに行ったら、小さな部屋に2段ベットが二つ置いてありました。その人が言うに、4人兄弟で同じ部屋で育ったからちょっとでも自分の物が出ていたりしたらすぐに部屋がごちゃごちゃになってしまうから、全て出したものは自分の引き出しにしまうということをやらなければいけなかったそう。それでちょっと几帳面すぎるほどの綺麗好きに納得できました。

部屋に生活感がないと落ち着かないと言ったけれど、他の友達では、目に着くところに物があると落ち着かないと言う人がいます。その人曰く、棚は絶対に戸があるものじゃないと、ごちゃごちゃして気になると言うのです。「でもバスルームだけは、戸にガラスがついていて、中が見える方がいい」と言うので、随分こだわるんだなと思っていて実家に遊びに行ったら、実家がまさにそれでした。ホコリのせいかはわからないけど、机の上のモニターにでさえカバーがかかっていて、とにかく何もパッと見て見えないようになっていました。

こうやって知らずのうちに自分が育った環境を自分でも作ってしまうところに、親がやっているのをみて巣を作ってしまう動物の習性のようなものを感じてしまいます。

とは言っても、親のようにはなりたくないと言って、反面教師している人もいます。一度友達が、買った本棚に脚をつけるんだということを言っていました。聞いてみると、母親がいつも大きくて色の暗い家具ばかりを集めていて、空気の流れがない空間に圧迫感を覚えたので、家具は下に脚がついているものでなければどんよりとして気持ちが悪いと言うのです。

全く人それぞれです。

今、自分のアパートがないので、友達の家に泊めてもらっています。

この友達の家には電子レンジがありません。でもコーヒー豆挽きは必需品として持っています。聞いてみると、やっぱり実家もそうだそうです。

もしかしたら、育った環境によって、必要・不必要の判断基準を身につけているだけなのかもしれません。だから、お姉ちゃんも、電子レンジやミシンは必要、台所のメモ帳や冷蔵庫に磁石は不必要と言うように認識いていて、家はピカピカである必要はない、と思っているのかもしれません。

お姉ちゃんより